会期:2016年5/7(土)-6/5(日)※水曜休み14:00-20:00
オープニングパーティー:5月7日(土)18:00-21:00
5月21日(土)17:00-19:00 トークイベント
涌井智仁 × 上妻世海
「人類がいなくなった後の表現」
会場:Garter @キタコレビル166-0002 東京都杉並区高円寺北3-4-13
info.chimpom@gmail.com
入場料:投げ銭制
助成 公益財団法人テルモ生命科学芸術財団
この度Garterでは涌井智仁の個展「Long,Long.Long」を開催致します。
涌井はこれまで、ジャンクパーツやオーディオなどをプログラミングによって有機的に結合させることで、テクノロジーの原始的な可能性をユーモラスに表現してきた若手作家です。
本展にて涌井は、これまで使用してきた様々なツールやプログラミングをただの「方法」として捉えるだけでなく、それらに不可欠な素材「データ」そのものの本質を探ります。そもそもデータとは何なのか?という問いをモチーフにすることで、テクノロジーやネットワークといった、近年のポストインターネットやAIなどを巡る人間社会のみを前提とした議論とは全く別の、データの根源的な可能性に迫ります。
本展のタイトル「Long,Long.Long」は、ビートルズのホワイトアルバムに納められた曲であり、大混乱を意味する「ヘルタスケルター」の次の曲です。物質や消費、政治、戦争、あらゆる事象が混乱の中にあった近現代において、一定の判断や基準は、宗教やイデオロギー、思想といった「大きなフレーミング」によって下されてきました。対してヒトやモノは、そこに属する部品/部分として、プロフィールのみが必要とされる存在でした。
本展の作品は、全て「オープンソース化されるプログラム」「涌井という作家によって制作された映像作品」「映像を流す為のデバイス」「電波となって宇宙を漂うデータ」という4つの側面に分解されるよう構成されています。これらの仕分けを涌井は、「大きなフレーム」に搾取されてきたヒトやモノ、データをそこから解き放ち、対等に存在するよう別々に名前を与えるためだと言います。
その中のひとつ「宇宙を漂うデータ」は、人類内の循環を目的とした現在の社会システムを越えうる、最も有力な可能性として象徴されます。そもそも、「データ」は電波として発信された瞬間に、光となって宇宙へと発信される、涌井いわく「距離的時間的無限を作れる数少ない人工物」です。それらは、地球外生命体と出会うべく宇宙を旅する「物質」ボイジャー号のようなロマンもミッションもないままに、しかしボイジャーよりも遥かに早いスピードと膨大な情報をもって宇宙を漂い続けています。(きっと地球の最初の発見は、いつか誰かによってその電波が受信された時、座標軸から発信元としてなされるのでしょう)。
また、本展にて涌井はデータやインターネットのメタファーとして、「木」にも注目しています。大地や太陽などから養分を得る事で酸素を発生させて、私たち人間の生を支える「木」。ネットはもちろん、無作為に収集されながら発信されて、常に広がり続けているデータの「ネットワーク」や「ダダ漏れ」の世界において、それはカオスを司るひとつの「秩序」とも、宇宙という壮大な自然のシステムに対してのひとつのミクロとも言える、循環の理想形なのかもしれません。
産業革命後に現れた物質社会を表現するさまざまなアーティストを、マルセル・デュシャンは「物質社会の印象派」と称したそうです。未来派などを含む彼らが表現した表層としての「物質」とは別に、デュシャンは便器をFountain(噴水、泉、水源)と呼ぶことで、「モノの見方」そのものを変えようと試みました。それは「モノとは何か?」という最も根本的な疑問として、物質社会や芸術、ヒトや社会の存在論に大きな影響を与えてきました。
IT革命後の現在、様々なアーティストが台頭し、シンギュラリティ問題なども語られ、いよいよ私た ちは新たなレイヤーを生きる時代に突入しているようです。しかし、まさしく「データの印象」を巡る議論や表現が加熱する一方で、データの存在論そのものはあまり一般的には語られてきませんでした。
「ヘルタスケルター」大混乱の次へ。「Long,Long,Long」は、本展が抱える途方も無い距離や時間の長さをテーマにしつつ、新たな世代によって再生される「次の曲/時代」です。
プレスリリースはこちらになります。
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Chim↑Pom
GarterはChim↑PomとGarterが高円寺で2015年から運営しているアーティストランスペース。いつ取り壊されてもおかしくないボロいビルにて不定期で開催される、Chim↑Pomキュレーションによる展覧会。アナーキックなアーティストによるエクストリームな展示がメインだが、近所にクレイジーなクレーマーが多いこともありいつまで存続できるかは全くの謎。
東京都杉並区高円寺北3-4-13 キタコレビル内
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